|
「これからダウンタウンの市場に行ってくるよ」
ゲストハウスのマネージャーは一瞬、、信じられない、という表情をした。
「どうして?生活に必要な品物はすべて、この近くで買えるでしょう」
そんな返事が、間髪を入れず返ってきた。危ない。強盗に遭うよ。この町に慣れていてもやめた方がいい。92年の内戦終了後、何が変わったていうと、犯罪が増えたんだから。特にこの数年はひどい。真剣に私の身を案じて、忠告してくれる。
過去4回の中米エルサルバドル訪問はすべて、ダウンタウン地区に宿をとった。だが、今夏の訪問では、街の中心を離れた郊外のゲストハウスに泊まることにした。ちょっと違ったエルサルバドルを経験したかったからだ。
宿から歩いて10分の所には、中米で最大規模のショッピングセンター、メトロ・セントロがそびえ立つ。いくつものデパートや映画館が入った複合モールである。まるでミニチュアの米国。メトロ・セントロからバスで約15分、20セント(エルサルバドルは米ドルを使用)でダウンタウンに着く。
首都サンサルバドルは、中米で一番の人口密度。中央市場一帯は相変わらずの騒々しさだ。手にカメラを持ってブラブラ歩く。町の様子はそれほど変わっていない。心なしか道路を占拠していた屋台の数が減ったということかな。町の美化政策は徐々に浸透しているようだ。
知り合いの雑貨屋に顔を出した後、コンクリート造り、2階半建ての市場周辺を歩き回る。迷路のように入り組んだ通り。いつものことだが、方向感覚を失ってしまう。
教会裏に出た。目の前は「米国製中古品蚤の市」だった。以前よりもそのスペースはかなり大きくなっていた。簡易コンロで肉を焼いていた男性、以前はロスアンジェルスで働いていたという。
「仕事がないのがね、この国の一番の問題なんだよ。だから犯罪が増えるのさ」
大通りで、下着を腕いっぱいに抱えていた女性も同じ事を言う。
「物売りで日銭を稼いでいる。四の子どもがいて、一日の手取りは五ドルほかに仕事がないんですよ」
タクシー運転手の話も同じ。
先進国である日本も、途上国であるエルサルバドルでも、働きたい人は大勢いるのに仕事は、ない。私には、世界経済の難しい理論はよく分からない。だが、どこか根本的な問題があるはず。誰かこの「仕事がない」という現象の背景を説明してくれないだろうか。
|