「360°」
< 続・値段交渉 >
カメラに向かって、笑顔いっぱい
のインディヘナの女の子 =グアテマラ、2004年6月

2004年の夏、中米グアテマラで「トゥクトゥク」を見かけた。タイで走り回っているのとほぼ同じ形の小型三輪タクシーだ。

あの「トゥクトゥク」が、地球の反対側でも走っている。それには驚いた。しかも地元では、スペイン語ではなくタイ語で「トゥクトゥク」と呼んでいた。

在グアテマラ十五年の友人によると、「トゥクトゥク」を見かけるようになったのはこの2、3年。おそらくタイを訪れた欧米人が持ち込んだのではないか、と。

料金は、例えば観光地のアンティグア市内だと10Q(ケッツアル=約120円)。タクシー代の5分の1。値段交渉をする必要もない。「トゥクトゥク」は、観光地を代表する乗り物なんなんだと、妙に納得した。

グアテマラを訪れる観光客−その多くは北米や欧州から−は、伝統的なマヤ民族の鮮やかな民族衣装を目当てにやって来る。このインディヘナとも呼ばれる先住民族は、グアテマラの人口の約6割を占める。

もっとも一言で「マヤ」と言っても、その使用言語は24もあり、彼らを単純にひとくくりにすることはできない。首都を歩いていると、民族衣装を身にまとったマヤの人を見かける。

ただし、そのほとんどは女性で、男性の民族衣装姿は地方に行かないと目にすることはない。男たちは、欧米の侵略者の的になってきたからだ。

気軽にエキゾチックさを味わえ、かつ物価の安い国だから海外旅行にはもってこい。だが、この国には、500年以上前にスペインから侵略されて以来、いまだに負の歴史が続いている。約20万人の犠牲者を出した内戦が終わったのは96年の12月のこと。

メキシコ国境が近いウエウエテナンゴ県を訪れた94年春、市場で野菜売りのインディヘナのおばさんと話をした。

−「この国も戦争が終わりですね。それで、今一番、つらいことって何ですか」
 「市場でね、値切られるのがつらいんですよ」

貧乏旅行とはいえ、私は彼女たちの何十倍のお金を持って移動している。取材費を切りつめるとはいえ、言い値を値切る癖も付いている。

また、観光客は自らの娯楽のために値段交渉にのぞむ。別に買わなくってもいい、その場のゲームを楽しむこともある。インディヘナの女性たちは、1Qのために、今も観光客を相手にする。

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