待っている人がいるから

「 知りたいから、楽しく働く 」
『国際協力』 (2000年12月号)
<好きになった国>
ボランティアとは、「どういう形であれ、自己
満足からは逃れることはできません。私の
場合は、知りたいから動いた。一緒に動い
て楽しいから続けてきた」
千葉県出身の石川智子さん(37歳)はそう
話す。

石川さんは1993年5月から現在まで、
中米グアテマラの先住民族の女性団体
「コナビグア(夫を奪われた女性たちの会)」
に個人の立場で関わり続けている。

コナビグアは内戦中、軍部の犠牲となって
夫や息子を失った女性たちが、自らの権利
保障や先住民族の地位向上を目指して88
年結成された民間団体だ。

石川さんは1987年、普通の旅行者として
約半年間、メキシコとグアテマラを訪れた。
グアテマラでは約2ヶ月間、田舎に家を借り
て暮らし、先住民族独特の織物やスペイン
語を学んだ。その土地の雰囲気や生活の
リズムを好きになった。

帰国後、NGOにボランティアとして参加し、
グアテマラのことを詳しく知るようになった。
実はこの国は、30年以上も内戦が続いて
いた。このグアテマラ内戦は、弱者に対する
すさまじい暴力の連続であった。特に先住
民族の女性たちが一番ひどい暴力の犠牲
者となっているを知ってショックだった。

96年に内戦は終わったが、女性たちは、
愛する家族を失い、今も精神的にも苦しん
でいる。強制的に連行され、どこかに埋葬
されたままになっている連れ合いを探す活
動は今も続いている。

「私は87年、グアテマラという土地が好き
になりました。しかしそこで、『何も見えなか
った。何も聞かなかった』。ショックでした」
「内戦時の証言を聞くと、人間性が疑われる
残虐行為がありました。どうしてそこまでの
ことができるのか、と。また、内戦中も、その
後も軍の力はまだまだ強力です。彼女たち
の活動に対して脅迫は続きます。それでも、
そんな妨害に止むことはありません。どうし
て、そこまで強くなれるのか。それが知りた
かったのです」

<一緒にいることが仕事>
コナビグアが運動を続けていく上で外国人
を必要としていると聞いたのはそんな時。
行けば分かるのではないか。そう思って、
行動した石川さん。もちろん、言葉の問題
や相手に受け入れてもらえないかも知れ
ないという不安はあった。しかし、まず行って、
話をしてみなければ分からない。そう信じ
て現地に入った。

石川さんの仕事は、「一緒にいる、そばに
いる」。ただそれだけ。首都に事務所を構
えるコナビグア所属女性たちが地方の村
に出かけるのについて行くだけ。「同行者」
(弾よけという人もいる)となるのだ。
外国人が一緒というだけで軍部や極右は
手出しができないからだ。もちろん、襲わ
れるかも知れないという危険は覚悟の
上だった。幸いこれまで、ひどい目に遭
ったことはない。

コナビグアの活動は、「自分たちが動かな
ければ何も変わらない」という信念にある。
石川さんは言う。「コナビグアの女性たち
地道な活動はまるで『あり(蟻)んこ』のよう
にちょこまかと動くようなもの。

彼女たちと一緒に村を訪ね、そこに生活する
犠牲者たちとおしゃべりしながら、つながりを
持つことから始めます。つらさのあまり表に
だせなかったことを共有するのです。

地道な活動だからこそ、女性が参加できるの
です。そういう活動に私が必要とされている
なら、と私は参加しているのです。

村にはいると、手を広げて迎え入れられるの
ですよ。実際、彼女たちとの生活は楽しい
んです」
 
石川さん活動費や生活費は、グアテマラに
関わる日本企業や団体の通訳・翻訳を請け
負って賄っている。

11月初め、2年半ぶりに日本に戻って約3
週間。日本を懐かしむ間もなく足早にグアテ
マラに戻っていった。