「 アジアメディア最前線 24 」
< 気になるビルマ報道の質低下(上) >
国軍の移動は観光客の目に触れることは少ない。それ故、外部の人には、この国が軍事政権であることがなかなか伝わらない。
(2003年8月)

ビルマ(ミャンマー)国内から10月19日、軍内部で政変が起こった、というニュースが入ってきた。どうやら、ビルマ軍事政権(SPDC=国家平和発展評議会)の議長であり、事実上の独裁者であるタンシュエ議長がキンニュン首相を更迭したのようだ。

インターネットのニュースを読んでも、翌日の新聞報道を読んでも、断片的な情報だけが流れ、ビルマで何が起こっているのか、この国の実情を正確に日本に伝えているメディアは数少なかった。

私は、93年からビルマ問題の取材を続けている。特に02年10月から04年1月まで、のべ1年1ヶ月にわたり、合法的にビルマ国内に滞在する機会を得た。その間、首都ラングーン(ヤンゴン)を中心に、状況が許す限りほぼ全国を見て回った。また、可能であれば現地の人と話をしてみた。そんな経験から、ビルマ問題の研究者ではない私でさえ、日本における今回のビルマ報道に納得がいかない部分がある。そのいくつかを、日本の新聞報道を中心に考えてみたい。

いつも話題となるのだが、この国を表記するのに、「ビルマ」か「ミャンマー」かという問題がある。かつて『ニュースステーション』のキャスターを務めた久米宏氏は、国民に支持されないビルマ軍政が国名を勝手に変更したのだから、「ミャンマー」という呼称は使えない、という趣旨の発言をしていた。

このように、よく引き合いに出されるのは、「軍政支持=ミャンマー」、「軍政反対=ビルマ」という立場だ。しかし、これはあくまでもビルマ人の場合であって、日本語を母国語する人には当てはまらない。ビルマ軍政は、クーデター政権のイメージを変えるために「英語呼称」を「ビルマ」から「ミャンマー」に変えただけなのだ。

「日本語表記の『ビルマ』の場合、『英語のBURMA由来ではなく、ポルトガル語由来だ。約400年の歴史がある言葉を一軍事政権による変更、それもまだ憲法にも定められていない段階で変える必要はない」(大野徹・大阪外大教授=ビルマ語)という意見も根強い。」(『朝日新聞』90年07月05日、夕刊) 

また、呼称変更に関して次のように説明が出た。
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「ビルマ」の国名表記、「ミャンマー」に<おことわり> 朝日新聞は10日付朝刊から、ビルマの国名表記を「ミャンマー」に、首都ラングーンの表記を「ヤンゴン」に改めます。ビルマ政府が表記を変更したのに伴って、外務省は10日からこれらの呼称変更を実施することを決めました。今回の措置はこれを受けたものです。当分の間、ミャンマー(ビルマ)、ヤンゴン(ラングーン)と、旧称を添えます。(『朝日新聞』、89年07月10日朝刊)

日本新聞協会加盟の新聞・通信社と放送局は、8月1日から外国地名の表記法を一部改定し、朝日新聞社もこれに同調することになりました。今回の表記改定の主なねらいは(1)民族主義の台頭や国内事情を考え、現地の呼び方を尊重する(2)現地の発音に近い表記をとる(3)慣用化した書き方は変えない−の3点です。(『朝日新聞』、89年07月29日)
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上の説明では、日本政府が「ミャンマー」表記としたから、メディアは、単純にそれに従ったということになる。また、「表示改訂のねらい」は、ビルマでの実状を全く反映していない。

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