金 明植 『 帝国の首枷 』
( 『辺境』1 影書房 1996年・10)


             「 一 帝国の同朋よ 」


           帝国の病い


           
きみは 知っているのか
            きみの 行く道を 知っているのか
            灰となり 灰となって
            微塵に砕ける その時間を 知っているのか
            跡形もなく 消え去る きみの運命と
            子孫の 呪い声を 知っているのか

            化石すら 残ってはいないだろう
            だれひとり きみの名を 呼ぶものはいない
             だろう
            きみの 飽食と
            戦争兵器の 増強と
            軍備の増額を 恥とも思わぬ
            きみの名を だれひとり 覚えていてはくれ
             ぬだろう
    
            きみは 知っているのか
            きみの 内部の痛みと
            内部の 腐敗と 無気力化した きみの 内
             部の恥を 知っているのか
            微塵に砕ける きみのGNPと
            きみの 貿易黒字と
            きみの 勝利と 殺りくと 収奪が
            何を意味するのかを はたして知っているの
             か
            きみは 知っているのか
            侵略の歴史と 殺りくの戦いと 虐殺の特高
             法を 知っているのか
    
            きみは 知っているのか
           破滅する 建設と
            中流意識の 虚構と 虚像
           そして きみの飽食が アフリカの飢えを延
             長させ
            アジアの貧困を いっそう深め
            戦争の兵器が 破滅の増加という 事実を
             そして 血の戦場で
            利益を まず打算する 悪習と
            血の上に建てられる 腐敗の バベルの塔を
            知っているのか

            きみは 知っているのか
            きみの 病原が どこから生じ
            どう進むのかを
            そして
            内部から腐っていく 灰に覆われた 墓場の
             匂いを
            知っているのか
            喪失の 国土よ!
            忘却の 友よ!
              
                      

ヒロヒトよ!
プルトニウム