金 明植 『 帝国の首枷 』
( 『辺境』1 影書房 1996年・10)


             「 一 帝国の同朋よ 」


           戦 後


           
友よ
            戦場で
            失った 友の名と
            その面影を 一度ぐらいは
            想い起こして ごらんなさいよ
            あなたが 撃った命は
            屍となり 土となり
            いまだに 帰れぬまま 消えていった命を
            思い起こして ごらんなさいよ
            そして
            戦場で
            夫を亡くした 女の 四半世紀
            彼女たちの 孤独な 毎日の 夜を
            孤児となった 子どもたちの 放浪の 日々
             を
            想い起こして ごらんなさいよ

            考えてみて ごらんなさいよ
            あなたがたが 大切に育ててきた
            子どもたちは またふたたび
            爆弾を つくり
            兵器技術供与の 政策に
            売られているのです
            あなたがたの 子どもたちは 戦略防衛の構
             想に 荷担することになり
            殺傷の 核ミサイルを つくりだすことは
            明らかな 事実なのです
           
            思い起こして ごらんなさいよ
            帝国の 友よ

            戦争の 傷跡は 中国の 土地でも
            残留孤児の 胸の奥に 深く深く 刻みつけ
             られているのです 満州でも
            フィリピンでも ビルマでも
            爆弾でうけた 傷跡は
            永遠に 消えることはないでしょう

            友よ! ふたたび
            戦争の 日が 近づいているのですよ
            友よ、考えてみて ごらんなさいよ
           戦争の日には あなたは ふたたび
           何かを 得るために
           戦場へと 馳せ参じるかもしれないことを
           また 戦場で だれかの 胸を
           まっさきに 狙うかもしれないことを
           一度ぐらい 二度くらいは
           考えてみて ごらんなさいよ

           考えてみて ごらんなさいよ
           いったい 宣戦布告というのは
           だれのための
           そして どんな人たちによって
           行われるのかを
          

「 プルトニウム 」
「 日本刀 」