| 写真の背後に抑圧の影 (2004/01/25)
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| ヤンゴン最大のパゴダ(仏教寺院)で祈る女性(宇田さん撮影) |
おととし10月から1年間、軍事政権下のミャンマーに滞在し、人々の暮らしを丹念に取材した神戸市在住のフォトジャーナリスト、宇田有三さん(40)が、各地でスライド上映会を開いています。
軍政はジャーナリストの入国を厳しく制限しており、ノーベル平和賞受賞者の民主化運動指導者、アウン・サン・スー・チーさんの動向以外には、情報がなかなか国外に伝わってこないのが実情です。貴重な写真を撮り続けている宇田さんに話を聞きました。
* * ミャンマーはかつて、首都ヤンゴンにタイから物資の買い出し客が集まるほど繁栄しました。しかし、1960年代からの鎖国政策や現在の軍政による経済失政で、東南アジアの最貧国に凋落(ちょうらく)してしまいました。
井戸で水くみをする少女。仏教寺院で語らう若い男女。田んぼで水牛を引く農民――。宇田さんが撮った人たちは、みんな穏やかにほほ笑んでいます。「軍政下の緊張感を感じない」と写真を見て驚く人も多いそうです。
しかし、一見何気ない作品の背後に抑圧の影がちらつきます。駅で少年が売る新聞や雑誌は娯楽やスポーツばかりで、政治雑誌は存在しません。言論の自由は保障されておらず、誰が「スパイ」かもわからない社会。宇田さんは「疑心暗鬼になって、長く滞在すると精神的に参ってしまう」と言います。
宇田さんは、スー・チーさんの象徴「戦うクジャク」の入れ墨を胸に施した男性を見つけ、1日がかりの説得の末、撮影にこぎ着けました。顔を写さず、2人きりの場所で撮るのが条件でした。国際人権団体の調べでは、「政治犯」として1000人以上が投獄されており、スー・チーさん支持を公にするのは「命がけの行為」なのです。
軍人がわいろを受け取る瞬間やヤミの両替商の隠し撮りにも成功しました。反政府武装ゲリラや少数民族の国内避難民キャンプにも密着取材しました。ミャンマー人の知人ですら「初めて見た」という、依然として不安定な治安状況を物語る貴重な資料です。
イラク戦争が始まった昨春には、「我が国も空爆してほしい」と真顔で話す人もいました。変化を望みながらかなわない閉塞(へいそく)感、それでもしたたかに生き抜く人たち。「写真を通じ、同じアジアの国の現実を知ってもらえれば」と願っています。
* * 宇田さんは中学の英語教諭時代、学校行事で写真係を任され、カメラの魅力と出合いました。90年に退職し、米国の写真学校で学んだ後、中米エルサルバドルやグアテマラなどで内戦を取材。その体験が、軍事政権下に生きる人々をテーマに撮るきっかけになりました。
今回は1万7000点の写真から800点を選び、上映しています。2月1日に大阪府堺市の「じばしん南大阪」、8日に松江市国際交流会館、14日に神戸市中央区の「ひょうご国際プラザ」など、各地で開きます。問い合わせは宇田さんのメール(info@uzo.net)まで。
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