金 明植 『 帝国の首枷 』
( 『辺境』1 影書房 1996年・10)

三 「民衆哀史」

        従軍慰安婦

四十二年前 ぼくの 祖母は
皇軍の 慰安婦として 連れて来られました

昼 虐げられ
夜 踏み躙られ
花の若さは 皇軍の 生け贄えと なりはてま
 した
ぼくの 祖母は
ビルマの 戦線に 連れて ゆかれ
幾夜も 涙で 過ごさねば なりませんでし
 た

銃声が 鳴り止んで
四十年 経た 今日も
故郷に 伝わる 恥ずかしい 話が
恨の 涙で 川となって おります

いまや 故郷の 言葉さえ 忘れ
祖国の 名さえ 奪われた
ぼくの 祖母は 今日も
四十年前の 皇軍の 戦線で
夜な 夜な
飽食の 帝国が アジアの 娘を 踏みしだ
 く 悪夢を 夢み
飽食の 帝国が アジアの 娘を 踏み躙
 る 侵略に 出会って おります
 
女工
鉄砲の前で
<準備中>