「 地球をたがやす 」

「 ごみ捨て場の変わらない現実 」
(6月28日)
ジョリータ・バリーさん(40)の両手は宙に浮いていた。仕事で汚れた手で、わが子に触れ
たくないのだろう。ずっと、中途半端な姿勢で娘を抱きかかえている。そんなお母さんに
お構いなく、ネーミャ(4)はべったりと甘え続ける。

今年2月、フィリピンのスモーキーバレーで、この母子に出会った。ネーミャはという と、
一人遊びをしている間に、体中を泥だらけ。今さら汚れた手を気にすることもないのに、
バリーさんは気をつかう。
「もうひとり、ダルウィンという6歳の息子がいるの。ここで働き始めて12年が過ぎた。
稼ぎ? 一日働いて、95ペソ(250円弱)くらいね」
ネーミャは寂しかったのだろう。私と話しをしている間も、母親にまとわりつく。そんな
娘に手を焼きながら、バリーさんは小声で身の上話を続けた。
「だんなさんは」
「出て行ったきり・・・・・」
「どうして?」
バリーさんは口をつぐんだ。その話は触れないで、そんな意思表示だった。初対面の
人にどこまで立ち入っていいのか、いつも考えさせられる。

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この9年間、ラテンアメリカから東南アジアまで六つの国のごみ捨て場を訪れてた。
そこで、「変わらない風景」を見てきた。例えば数年後、この母と子の生活は改善
されているだろうか。おそらく 「 ノー 」 だ。

外からの訪問者は、 まずはその場の厳しい現実に、 次いで人間同士の温かい
ふれあいに、目を奪われる。しかし、「変わらない」のは仕方ないと傍観者になる
ことは、事態は悪くすることに手を貸すことである。ようやく、今になって、そのこと
に気づいた。

(おわり)
たがやす11