「 地球をたがやす 」

「 無限の空 舞う鳥を目安に 」
(6月7日)
エルサルバドル郊外・ネハパ市へ向かうバスに乗り込んだ。車内では、
いつも左側に席を取る。バスは車体をガタガタと揺らせながら走る。
1時間ほどすると、民家を通り過ぎて開けた場所に出た。

小さな窓枠から、真っ青な空を見上げる。南北アメリカをつなぐ、地峡
のこの小さな国でも、空は無限に広がっている。地球の反対側に来た
という感覚はない。 空一面に黒ゴマをふったような光景が迫ってくる。
停留所はない。下車する地点は、その黒ゴマを目安に、自分で判断
するのだ。目を凝らしていると、空にちらばった黒い点は、風に舞う、
数え切れないくらいの鳥の姿であることがわかってくる。
降車地点になると、胸の鼓動が高まる。「行くか、戻るか」。一瞬、躊躇
する。1週間近く通って慣れているはずなのに、このためらいは何なの
だろうか。バスの天井を思いっきり手で叩く。

「アキ!(ここで!)」
運転手に下りる合図をする。
人目を避けるように、脇道を歩く。くるぶしまで厚手の革で覆われた
靴は、白い土ぼこりを舞上げる。ちょっと立ち止まり、靴のひもを締め
直す。同時に、空を見上げて緩んだ心をギュッと引き締める。
今日は直接現場に入らず、空に舞う鳥のように、ここの現状を俯瞰して
みよう。

「ごみ捨て場で働く人びと」。そのイメージに、多くの人はフィリピンを
重ねる。だが、地球の反対側の地にも、同じ状況がある。10 年近い
歳月、変わらぬ光景を目にしてきた。これが貧困の現状だと表現しても、
何も解決にならない。その背景に何があるのか。再び、空を見上げる。
鳥に答えを求めても、もちろん答えてくれない。
たがやす10
たがやす12