「 地球をたがやす 」

「 握り返す小さな手は冷たかった 」
(6月7日)
バリッ、バリッ、バリ。何気なく空き瓶を踏みつぶしていく。
「いたっ」
右足の裏に痛みを感じた。長靴の底が破けて、ガラス片が刺さっている。
慌てて靴と靴下を脱ぐ。ガラス片は、足の裏を少し傷つけただけ。廃棄
された注射針でなくてよかった。それでも、もしかしたら病気に感染する
かもしれない。そう思うと少し憂うつだ。
朝からずっと薄曇り空。今にもひと雨きそうな空になってきた。乾期に入っ
たから大丈夫だと思っていたが、甘った。半時間もすると、大粒の雨が
落ちてきた。

日よけの青いシートを張った屋台へ、裸足の子どもたちと一緒に駆け込む。
雑炊や飲み物を売っている屋台だ。汗だくで麺をゆでるおばさんにカメラを
向けると、顔をそむけられた。カンボジアに来てから、撮影を嫌がられたの
は初めてだった。
5歳くらいの男の子が身体を寄せてきた。不安な顔つきで、私のズボンの裾
をつかむ。片手にポリ袋を持っている。拾い集めたペットボトルが、袋の口
からのぞく。これじゃあ、500リエル(約15 円)にもならないか。一緒に働い
ている家族とはぐれたのだろう。
雨をものともせず、ゴミ山を均すブルトーザーは、黒煙を吐きながら走り回る。
危ないなあ。
男の子が私の手を握ってきた。真っ黒に汚れた手である。私自身も泥だらけ
だったが、握り返すのを、一瞬、躊躇した。
もっと安全な場所へ連れて行ってやろうと、その手を引く。ぎゅっと握り返す
小さな手は、冷たかった。
見知らぬ人の手をひいたのは久しぶり。なんとなく気持ちよかった。また明日
も来ようと、気力がわいてきた。
たがやす8
たがやす10